撮影監督で Cinematography Database の創設者であるマット・ワークマン (Matt Workman) 氏は、ここ数年、プリビズやショットのプランニングにゲームエンジンを利用してきました。そしてまた、Unreal Engine ベースのリアルタイム映画撮影シミュレータ Cine Tracer (https://www.cinetracer.com) の開発者でもあります。
シーンをイメージしたり、バーチャルシネマトグラフィ (仮想空間での映画制作) にリアルタイムレンダリングが役立つことは分かっている。しかし、シーンのアセットをもっとプロシージャルに作成したい。そう考えたワークマン氏は、ほんの数カ月前から Houdini を使い始め、進捗状況を発信しています。彼が今、どこまで来ているかをお聞きしました。
Houdini を試してみようと思ったきっかけを教えてください。それまではどんなツールを使っていましたか?
マット・ワークマン氏: 従来の 3D プリビズをしていた頃は、Maya (MEL と Python) と Cinema 4D (Xpresso と Python) を使っていました。セミプロシージャルのモデルを作成し、三平面投影やボックス投影を使えば、特に問題を感じてはいませんでした。
ところが、Unreal Engine を使って Cine Tracer の開発をスタートすると、モデルに UV を正確に展開したり、コリジョン形状を生成したりといった必要性が出てきました。Houdini のデモで、UV のプロシージャル生成機能や、とりわけゲームエンジンと併用した場合に可能になる時間節約の機能を見ていましたから、私も使ってみようと思ったわけです。
特に Unreal と Houdini に関して、プロシージャルのどの側面を作業に取り入れたいと考えたのですか?
ワークマン氏: 私が開発したゲーム/アプリ Cine Tracer のビルディングシステムは、4x4M のワールドグリッドを使用しています。したがって、すべてが完璧にタイリングされ、グリッドにぴったりはまらなくてはなりません。そのグリッドの中で、プロシージャルデザインをたくさん作り、ランダムさやノイズも加えたいのです。Houdini なら、このワールドグリッドにぴったりとはまるアセットを作成できるうえに、バリエーションも無限に生成できます。風景や、窓付きの壁のイテレーション10回を数分で行え、そのすべてが同じスタイルの UV 展開、コリジョン、頂点カラーなどを共有します。
実際、ツールについて何から学び、何から試しましたか?
ワークマン氏: Vellum を使ってカーテンを作ることから始めました。それから、プロシージャルのテーブル、I形鋼、階段、線路、窓など、様々なオブジェクトを作りました。Houdini の「はじめよう (Getting Started) 」のPDF は全部読みましたし、YouTube で何百本ものチュートリアルも見ました。
使っているハードウェアは、AMD Threadripper 1950X、Nvidia 2080 Ti、64GB の RAM を搭載したカスタム PC です。開発用の Mac OS/iOSは、iMac Pro と iPad Pro を使用しています。
Houdini を使ってみてわかったこと、特にアセットや地形の作成、それらの Unreal への読み込みについて聞かせてください。また、それを他のツールではなく、Houdini で行うメリットは何ですか?
ワークマン氏: Unreal Engine の「スタティックメッシュ」の読み込みには、とても厳しいルールがあります。ジオメトリ、LOD、UVマップ、ライトマップ、コリジョン、モーフターゲットなど、実に多くの要素を考慮しなければなりません。ほかの DCC ツールは「アウトライナ」を使って1つのシーンのすべてのアセットを管理しますが、これも煩雑です。その点、Houdini は、UE4に完全に読み込めるメッシュを得るために必要な複雑な操作を分かりやすい画面で行えます。また、Houdini なら、パイプラインの管理もとても簡単に行えることがわかりました。Python を使った自動化には着手していませんが、既にある SOP と SideFX Labs の新しいツールで間に合っています。
Houdini を習得するうえで大変だったことや、Houdini とゲームエンジンのインタラクションに関して苦労したことがあれば、教えてください。
ワークマン氏: Houdini なら 3D モデルのあらゆる情報を取得できますが、ほかの DCC ツールでは隠れていたり、わかりにくいことが多いものです。たとえば、頂点接線や頂点カラーは、私にはなじみのない概念でした。ところが今や、モデルの頂点カラーを取得し、モデルを有機的に見せるために複数のテクスチャをブレンドできる UE4 のシェーダを使っています。Houdini では、特定の頂点をグループ化して、頂点カラーにノイズを追加し、そのノイズをコントロールすることも簡単です。これも Houdini のチュートリアルで知って UE4 で実践したことの1つです。
今後 Houdini をどのように仕事に使っていきたいと考えていますか?
ワークマン氏: ワールドのすべてを Houdini で構築したいです。HDA は Houdini 内で再利用できます。たとえば階段のツールを作ったら、それを別のツール内で再利用して、さらにそのツールを別のツール内で再利用できます。ちょうど、基本的なアメリカンスタイルの家と町、それから地形を作っているところです。次はプロシージャルのハードサーフェスで映画制作の機材を作る予定です。その次はおそらく、植生 (Foliage) でしょう。
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