Posted 1月 20, 2015
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チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した宇宙探査機ロゼッタの歴史的偉業を記念し、欧州宇宙機関とワルシャワに拠点を置く Platige Image は、我々を取り巻く宇宙の哲学的問題を探る短編映画、 Ambition を共同で制作した。

ロゼッタ・ミッション同様、精度とタイミングが、この VFX 満載の7分ほどの映像の制作において不可欠な要素であった。 Platige Image はパイプラインに Houdini を採用することで、その堅牢なツールセットにより、三角形状の金属製ナノボットからなる雲や惑星の創生と破壊といった主要ショットにおいて、難しい VFX 作業の多くを厳しい時間的制約の中で完成させることができた。

「Houdini の特長の中でも、私のワークフローにおいて最も重要度が高かったのがその完全性です。」 Platige で FX テクニカルディレクタを務める Łukasz Sobisz 氏は言う。「多様なエフェクトを単一のソフトウェア環境で処理することができ、 SOP から Mantra による最終レンダリングに至るあらゆる状況下で、データが透過的でアクセスが容易であるため、すべてのシミュレーションエレメント間で完全なインタラクションを維持することができました。」

Nanobots

ナノボットのモーション開発とシミュレーションを担当した Platige の FX テクニカルディレクタ Timucin Ozger 氏は、 Houdini のパーティクルダイナミクスツールを使ってこのショットに取り組んだ。

求められたのは、知性のあるロボットのようなパーティクルの挙動であった。これを実現するにあたり、 Ozger 氏は Houdini でパーティクルのビヘイビアを定める規則を構築、制限速度や近接認識などのアトリビュートを定義し、パーティクル間の速度共有させ、一定の動きを維持してパーティクルの無秩序な挙動を制限した。これにより、パーティクルの自由な動きと実写の役者や背景とのインタラクションの正確なバランスのための必要な制御を行うことができた。

「このビヘイビアを作成するのに、コーディングは一切必要ありませんでした。」 Ozger 氏は説明する。「代わりに Houdini に搭載されているノードを使用し、 ‘popinteract’ や ‘popspeedlimit’ などのノード内部に規則を付与することによって、この作業を完成させました。」

Platige Image のプロジェクト スーパーバイザー兼コンポジティング アーティストである Jakub Knapik 氏は、 FX アーティストの Maciej Jurgielewicz 氏とともに、ナノボットの最終ルックと技術パス開発を行った。必要な技術パスはすべて、 Mantra の持つあらゆる情報の処理/出力能力により生成され、広範にわたり使用された。

「法線パスを受け渡すために、ナノボットのポイントクラウドを使ってボリュームを生成しました。」ナノボットのシェーディングとレンダリングを担当した Jurgielewicz 氏は説明する。「その後、密度フィールドの勾配として法線を演算し、平滑度と密度分布の調整を十分に行うことができました。」

Creating And Destroying Planets

実写された役者の周囲に浮かび、後に崩壊する多数の惑星は、 Houdini のさまざまなシミュレーション機能を用いて作り出された。有限要素法 (FEM) ソルバをはじめ、パックプリミティブ リジッドボディダイナミクス (RBD) を使った小さな岩、また FLIP ソルバや Pyro ソルバを通常のパーティクルダイナミクス (DOP) でサポートし、副次的な破片や火花のエフェクトを作成した。

こうしたセットアップを同一環境で処理できるだけではなく、一連の可変フォースや大量のシミュレーションレイヤによって操作できるため、他のエレメントとのインタラクションが容易に実現できた。

「Pyro FX には、密度ボリューム内にパーティクルを分散させる簡易セットアップを考案しました。」 Sobisz 氏は言う。「こうした再生成パーティクルが堆積する各フレームでは、速度フィールドにフォースが追加され、 Pyro FX は、他のシミュレーションエレメントと同様に動作するのです。このことは Attraction フォースにとっては重要でした。このフォースは、 VOP を使用して構築されたパーティクルフォースのオープンな特性により、容易にカスタマイズできました。」

地響きとともに現れる地中層については、当初、有限要素法 (FEM) ソルバを使ってシミュレーションされ、その結果を用いて、カスタムの Attribute VOP でアタッチされたポイントクラウドを操作した。こうしたポイントクラウドは VDB によって符号付距離フィールドに変換された後、衝突ジオメトリとして機能した。ある閾値を超えたポイントは、その上で走る FLIP-Sand シミュレーションに追加された。

落下して崩壊する惑星は RBD-FLIP の相互連携を使って作成され、地表に衝突すると同時に、大きくうねる黒い雲に形を変える。衝突の衝撃を受けた破片をサーフェス (SOP) ソルバで変形させた後、その衝撃によって生じた SDF の差異から FLIP パーティクルを発生させた。その後、境界損耗のプロセスで、 VDB ノードを使って衝突の結果生じた破片を引き寄せ、連続するフレーム間の差異を計算することで、再びパーティクルの破片を発生させた。

Rendering

「Mantra を用いた大量データの転送に対して、惑星創生のショットが大きなベンチマークになりました。」 Sobisz 氏は言う。

惑星創生ショットのレンダリングは、ポイントレンダリング用の異なる5つのパーティクルレイヤ (ポイント数、約1億個) など、1フレームにつきおおよそ 15GB のキャッシュデータと、高解像度の粉塵ボリューム、核となる爆発と炎、約 50万のインスタンス化された個々の岩のジオメトリから構成され、標準の skylight/HDR と、シミュレーションした爆発に基づいたボリュームライトで照らされた。エレメントごとにシェーダを少しばかり拡張し、マスキングおよび速度マグニチュードのための追加変数を出力した。

「遅延ロードプロシージャルのおかげで、単一のマシンで瞬時に IFD フィールドを生成することができました。」 Sobisz 氏は言う。「今回のプロジェクトで、品質とスケーラビリティの両面における Mantra の予測可能性の高さが明らかになり、 RAM の使用率も 32GB の制限をはるかに下回ったことで、次回はさらに難しい条件に挑むことになりそうです。」

Houdini を用いて Platige は、このプロジェクトの全編にわたるエフェクト制作作業の大部分をこなし、厳しいスケジュールのもとで、貴重な時間とリソースを節約しながら作業を進めることができた。

「このプロジェクトにおける VFX 制作作業の大部分を、同一のソフトウェアパッケージ内で行うことができたのは、最も大きなメリットでした。」 Sobisz 氏は言う。

About Platige

The Houdini Crew


Łukasz Sobisz
Timucin Ozger
Maciej Jurgielewicz

Platige は CG イメージ、 3D アニメーション、デジタル特殊効果のデザインを専門とし、画期的なアイディアやイノベーションを形にするクリエイティブなアニメーションスタジオです。 SIGGRAPH での短編アニメーション部門賞の過去4回にわたる受賞や、英国映画テレビ芸術アカデミー (BAFTA) 賞受賞など、200以上に及ぶ賞を受賞する栄誉に輝き、国際的にも高い評価を受けています。 Platige が欧州宇宙機関と共同で制作した最新短編映画 Ambition は、全米特殊効果協会主催による第13回 VES アワードの Outstanding Visual Effects in a Commercial (コマーシャル部門賞) にノミネートされていいます。


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