Watch the 'Canary' Houdini Connect feature with Ben and PH.
数々の受賞歴を誇るビジュアルエフェクトスタジオに新設されたアニメーション部門、Rodeo FX Animation の新規プロジェクトの 1 つが、短編映画「Canary」です。Pierre-Hugues (「PH」) Dallaire と Benoit (「Ben」) Therriault の監督作品で、1922年の炭鉱を舞台とした教訓が込められたストーリーです。炭鉱には、生命に危険を及ぼすメタンガスを感知するカナリアがいて、その世話は少年ソニーに任されています。カナリアと特別な絆を築いたソニーは、炭鉱労働者たちに悪ふざけをするようになります。しかし、悪ふざけが悲劇的な結末に至るとは、夢にも思っていません。
PH と Ben が Rodeo FX に入社したのは、モントリオールを拠点とするデザインおよびアニメーションスタジオ Shed でコマーシャル制作のキャリアを積んだ後のことです。彼らは密に連携したクリエイティブチームの一員で、主に Softimage を使用していました。2016 年に Autodesk が Softimage のサポートを終了すると、チームは Houdini を導入し、短編アニメーション映画「Outside」の制作に着手します。首に鈴をつけた元気な黒い飼いネコのストーリーで、外にいる鳥を捕まえることを夢見ています。家を抜け出した黒ネコは、首に鈴をつけた状態で鳥を捕まえるのがどんなに難しいかを思い知ります。

Houdini を取り込んだパイプラインを新たに構築する必要に迫られた PH と Ben は、SideFX に協力を求めます。開発者とアーティストを社内に派遣してもらい、連携しながら制作を進めました。「Outside」の制作は、2018 年の公開を告げる予告編ができたところで中断され、完成には至りませんでした。その後まもなく PH と Ben は新しいコンテンツ制作部門の設立メンバーとして、Rodeo FX に入社します。2 人が「Canary」の制作を提案すると、社長の Sébastien Moreau からは即座に承認がおりました。そこで、かつての同僚を何人か加えた新チームの編成に取り掛かりました。
「Canary」の完成には約 15 ヶ月を要しました。新しく編成された Rodeo FX Animation チームは、新しいパイプラインを構築しました。USD フレームワークを使用したこのパイプラインは、制作の前から準備がはじまり、制作中にも改善されていきました。この結果、Solaris ツールセットを採用した、非破壊かつコラボレーション可能なワークフローを Houdini 内で確立することができました。最終的な画像は、Maxon Redshift を使用して Houdini でレンダリングすることで、スピードと画質の両面で高いハードルをクリアしました。Houdini と Redshift の連携により、ディテール豊富な 3D 環境を容易に作成できるようになりました。水平線までびっしりと、インスタンス化されたジオメトリを配置できます。
PH Dallaire 氏は次のように話します。「Ben と私は以前から、Houdini のノードベースのプロシージャルアプローチの可能性を強く信じていました。アートディレクションの機能が向上し、アーティストは短時間でイテレーションが可能です。それらは私たちにとって、Houdini の可能性を実証するものでした。Houdini は期待にたがわず、大切な作品に命を吹き込んでくれています。長年ともに働いてきたチームメンバーにとって、Houdini は、一番のツールです」
新しいパイプラインの可能性を最大に引き出そうと、「Canary」の撮影ライティングディレクターである Philippe Sylvain 氏は、思い切ったレンダリングアプローチを提案しました。Sylvain 氏は言います。「通常、レンダリングはいくつものパスに分けて実行し、コンポジットでまとめます。しかし私は、ビューティパス 1 回で画像をレンダリングできるはずだという思いでいました。その可能性をこのプロジェクトで探ったのです。これは、カメラが動いていても、被写界深度を正確にレンダリングできることを意味します。鉱山の爆発後の長いシーケンスでも、飛んでくる火の粉のパーティクルをシーン内で直接作成したところ、被写界深度に合った明るさとサイズをレンダラが拾ってくれました」
Sylvain 氏のシングルレンダリングアプローチは、コンポジット部門の作業を低減させる一方で、ライティングとフォーカスに関するすべての決定を早期に行い、効果的にベイクする必要がありました。「レンダリングを分けることもありましたが、画像のコンポーネントを 1 つひとつ分割することはありませんでした。たいていは、前景と背景に分ける、あるいはレンダリングを最適化するために火のパスを追加する程度です。ライティングアーティストは、Solaris 内で直接ライティングを処理できるようになったうえに、素晴らしいシネマティックな画が得られました」と、Sylvain 氏。
作品名でもある小さくて黄色いカナリアは、すべてのシーンで美しくグルーミングされていなくてはなりません。シングルパスレンダリングアプローチに、Houdini のグルーミングツールを組み合わせることで、近接したショットでもきれいに整った羽毛にできました。
しかし、このカナリアのデザインには、特有の課題がありました。キャラクタリギングスーパーバイザーの Carlos Valcárcel 氏は言います。「羽毛にはカラーパターンがありました。ヘアの場合には、毛束に色やグラデーションを割り当てるのが一般的で、画像が必要になることは稀です。残念ながら、私たちが使用した Redshift のバージョンでは、ヘアのテクスチャリングはサポートされていなかったため、この問題に対応するのは簡単ではありませんでした」
Valcárcel、Sylvain、リードグルームアーティストの Martine Chartrand、ルックデベロップメントリードの Thea Yau、CG ヘッドの Sylvain Lebeau などのメンバーがこの課題の解決策を検討しました。実験を重ねた結果、Houdini の Mantra レンダラを使用し、重要な中間ステップを取り入れた 2 段階プロセスにたどり着きました。
Valcárcel 氏は語ります。「羽毛に UV 投影で画像を適用しました。これでヘアの各ポイントは、表示すべき色を認識できます」この時点では、Redshift はこの重要な情報を解釈できなかったため、羽毛から個々のヘアを取り出して、Houdini で問題を解決しました。ヘアを個別に正方形のタイルにマッピングし、U 値がヘアの単位行列、V 値がグラデーションを定義する、Redshift 独自の UV 空間の使い方に合わせて配置しました。「ヘアが 100 本あるとしましょう。最初のヘアを U:0.01 に配置したら、それをタイルの垂直方向いっぱいに真っすぐにし、V 座標で 0 から 1 までのグラデーションを適用します」

次は、この正方形のタイルの Top ビューを Mantra でレンダリングします。「そのレンダリングは、とても奇妙な見た目でした。羽毛のヘアがどんなに短くても、タイルの長さいっぱいに引き伸ばされます。そのため、完成したタイルは、ランダムに並んだ色の列にしか見えませんでした」と、Valcárcel 氏。しかし、この奇妙な見た目のタイルを OSL (Open Shading Language) を介して Redshift に取り込むと、タイル上の該当の UV 座標でテクスチャカラーをサンプリングし、レンダラは画像パターンを正確に羽毛に適用してくれました。「まるで、あるレンダラで羽毛のテクスチャを作成し、別のレンダラが理解できる歪んだテクスチャを作成する、変換フェーズのようでした」この多段階のワークフローが稼働すると、カナリアのすべての羽毛に必要なテクスチャを適用できるようになりました。
Valcárcel 氏は言います。「羽毛のレンダリングには、解決すべきたくさんの問題がありました。作業が深夜に及ぶことも何度もありました。論理的な段階を踏んだ結果、そこへ到達したわけですが、最後まで色が乱雑に並んでいるようにしか見えず、うまくいくようには思えませんでした。ところが、突如として、すべてがぴたりとはまりました。実に見事なチームワークでした」

「Canary」のキャラクタ (人間も、カナリアも) は、Autodesk Maya でリギングおよびアニメーションしました。フェイシャルリグにはブレンドシェイプを使用し (キャラクタごとに約 200 のシェイプ)、クリエイティブチームが過去に使用したものとよく似たセットアップにしました。
フェイシャルリグに必要な個々のブレンドシェイプを生成するツールとして、Carlos Valcárcel 氏は Maya ではなく Houdini を採用しました。Valcárcel 氏は話します。「最終的には、手動でスカルプトしたブレンドシェイプを使用したいと考えていましたが、それの仕事を引き受けられるモデラーがいるかどうかが分かりませんでした。そこで、まず変形オペレータでブレンドシェイプを生成してそれをリグで直接使用する、バックアップを用意しました。この戦略なら、ポイントの方向と減衰を適切に設定したブレンドシェイプの最初のパスをモデラーに渡し、必要に応じて土台として使ってもらうことも可能です。生成されたシェイプの中にはブレンドが非常にうまくいって、レタッチが不要なものもあり、モデリングの時間を短縮できました。こうしたカスタムのジオメトリ変形オペレータの構築には、柔軟で強力なプラットフォームが必要でした。それが、Maya のリグで使用するシェイプの作成に Houdini を用いた理由です」

各キャラクタのブレンドシェイプの出発点となったのは、高解像度のマスターフェイシャルジオメトリでした。これをもとに、Valcárcel 氏はモデラーから提供されたプライマリブレンドシェイプを使用したり、Houdini のプロシージャルオペレータを使ってプライマリブレンドシェイプを自ら作成しました。「最初のパスとして生成したブレンドシェイプをモデラーに渡すと、彼らは再スカルプトを施して、素晴らしく仕上げてくれました。その後、ブレンドシェイプを Houdini に戻してから、いくつものサブ領域に分割しました」と、Valcárcel 氏。
Valcárcel 氏はまず、ブレンドシェイプなしで顔をリギングするのに必要なすべての変形オペレータを含むグラフを作成しました。Valcárcel 氏は説明します。「眉の領域については、垂直方向に額に沿ったパスを表すバーチカルカーブをトレースし、それをジオメトリポイントが追跡するようにしました。それからウェイトをペイントして、カーブの方向に合わせて上下に動く額の部分を定義しました」2 つ目のオペレータでは、横軸に同等のパラメータを定義しました。「口には別のカーブを設定し、頬には膨張オペレータ (頬のポイントを外側に押し出す球) を使用しました。まぶたは、眼球の中心にあるピボットを基準に回転するようポイントを設定し、再びウェイトをペイントしました」
オペレータの構築後、Valcárcel 氏は Houdini の スライダコントロールを使用してテストしました。リグが正確に変形していることを確認できたら、スライダを一番端に設定し (満面の笑み、ひどいしかめ面など)、そのジオメトリをエクスポートして、モデリングチームが微調整できるようにしました。「モデラーはそのファイルを ZBrush で開き、調整を加えてから送り返してくれました。私はその最終スカルプトを Houdini に取り込み、不要になったオペレータを無効にしました。ただし、眉、口、頬、まぶたなどの各領域のウェイトマップは引き続き同じものを使用し、モデラーが加えた変更を特定できるようにしました。次に、それぞれのウェイトマップをいくつものサブ領域にプロシージャルに分割して、領域のグローバルコントロールだけでなく、ローカルコントロールもできるようにしました」と、Valcárcel 氏。ローカルに分割された、これらの最終的なシェイプをすべてエクスポートし、Maya のメインのフェイシャルリグを使ってアニメートしました。

Valcárcel 氏は語ります。「このようなシェイプの分割は、Maya よりも Houdini の方が簡単にできることが分かりました。「Houdini でブレインストーミングすることも可能です。スケッチブックのように使用して、プロトタイプを作成したり、アイデアをテストしました。Houdini は、優れた数学的フレームワークによる非破壊の操作が可能で、ジオメトリを駆動したり、オブジェクト間のリレーションを構築できる素晴らしいツールです。興味深いと同時に少し残念なのは、アニメータが使用した Maya リグのポイント間の線形補間よりも、Houdini のフェイシャルリグの方がはるかに優れていることです。カーブに沿って補間を計算してくれます。評価も Houdini の方が速かったと思います。カスタムの Python Viewer ステートを使い、Houdini でリグを動かすのは、楽しくてインタラクティブな作業でした。コントローラオブジェクトを選ぶのではなく、ジオメトリ上でマウスを使用して直接リグをアクティブにすることができました」
「Canary」は、Houdini のリギングおよびアニメーションフレームワーク KineFX をテストする機会でもありました。アニメーションパイプラインでよく使われるツールの 1 つが、「スティッキーツール」です。ジオメトリ上の任意の場所に配置して、リグの変形に追従させる「オンデマンド」コントローラをアニメータに提供するものです。このツールにより、アニメータは、すべての変形に加えて、追加の変形レイヤーを得られることになります。「Maya でこのようなツールを開発する時間はありませんでした。しかし Houdini では、ジオメトリからポイントを抽出し、それらを KineFX でジョイントとして使用するのが非常に簡単なので、そうしたツールも実に簡単に構築できます。アニメーションや CFX で変形の問題を解決する際のセーフティネットになってくれました」
Valcárcel 氏は Houdini を使用しながら、かつて Softimage を使っていた頃のような楽しさを覚えました。「私は 15年以上、Softimage を仕事に使ってきました。その機能設計とエンジニアリングにはいつも驚いていたものです。朝 Softimage を起動するときには、「仕事が簡単に運ぶはずだ」と信じていました。それに、毎日新しい発見がありました。それはまさに、喜びでした」と、Valcárcel 氏。

「私は、Houdini でも同じように感じています。機能設計は一貫し、常に新しい方法を発見することができます。アニメーションの未来を Houdini に賭けてもよいとさえ思っています。現在の定番は Maya ですが、それは Maya が唯一の現実的なソリューションだからです。ビジネス的にも、技術的にも、それに異論はありません。しかし、これからは USD です。アニメーションフレームワークが USD で開発されても驚きはしません。USD の扱い、アニメーションについての新たな考え方、KineFX に見い出される可能性、ユーザのエンパワーメント。アニメーションに最適なソフトウェアは Houdini になるだろうと感じています」
コメント
Zbaobao 2 年, 3 ヶ月 前 |
能不能干点人干的事情,好好升级完成你的karma渲染起,拉跨的软件
1449686498x 2 年, 3 ヶ月 前 |
有点素质好吗
wanglifu 2 年, 3 ヶ月 前 |
真的太给国人丢脸了
harryabreu 2 年, 3 ヶ月 前 |
Wonderful that pipeline is incredible.
Houdini for character animation is very promising.
netlander 2 年, 2 ヶ月 前 |
Now I understand why I subconsciously never fully committed to Maya rigging and animation, it's because I was waiting for KineFX. Hope I won't be disappointed.
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