Posted 9月 14, 2015
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『Skål!』、スウェーデン語で 「乾杯」 を意味するこの言葉は、互いに敵意を抱きながら酒を酌み交わす一組のハムスターを描いた短編アニメーションのタイトルである。 このアニメーションは、ドイツの Institute of Animation at Filmakademie Baden-Württemberg の才能豊かな学生たちのグループの制作だ。

Marco Hakenjos、 Timm Wagener、 Manuel Seifert、 Johannes Franz、 Christian "Chan" Zehetmeier は、アニメーション / エフェクト制作とテクニカル ディレクティングの課程で学ぶ学生で、 『Skål!』 は彼らの卒業プロジェクトである。

このプロジェクトには Houdini が採用され、手作りのセットと CG キャラクタの統合、とりわけ、半写実的なミニチュア世界の表現にその効果が発揮された。デジタルセットは写真測量法を用いて生成され、 クロスシミュレーション、ファー生成、シェーディング、レンダリング、ライティングなどの VFX の大部分が Houdini によって仕上げられた。

パイプラインの構築

このプロジェクトのパイプライン構築にあたり、 Houdini のデジタルアセット技術により統合されたツールやライブラリのコレクションを作成した。この方法により、特に制作終盤における作業時間の短縮を図ることができた。 Houdini デジタルアセットは作業負荷の軽減を図り、アイディアの試行錯誤に要される反復的なタスクを最小限にとどめるうえで重要な役割を果たした。

キャラクタ FX 、クロスとファー

 キャラクタ アニメーションは Alembic ファイル形式で Houdini にインポートされ、 Houdini内 で Cloth アセットが割り当てられた。このアセットは、ジオメトリの選択範囲にクロスシミュレーションをクリックひとつで自動的に生成するようにデザインされており、変更が必要な場合でも、パイプラインのあらゆる段階で修正を加えられるよう編集可能なノードが装備されていた。アニメーション作成後の修正にも、場合によっては Cloth アセット が使われた。

ハムスターの毛のスタイリングには Houdini の Fur ツールを使用し、length (長さ)、density (密度)、clumping (塊り)、 frizz (縮れ) 等の Fur アトリビュートを設定するために、Mudbox でペイントしたテクスチャ マップと組み合わせた。

各キャラクタの毛並みは複数の Fur システムから構成され、それぞれのシステムが体の各部の動きに合わせて適切に動作するようにデザインされた。配置された後、 Fur システムはキャラクタごとにアセットにまとめられた。

毛をシミュレーションしたことにより、ハムスターの動きに合った自然な毛の動きを表現できただけでなく、衣服と毛が交差するのを防ぐこともできた。シミュレーションされたガイドはキャッシュされ、シーンのライティング時に Fur アセットにロードされた。

ライティングとレンダリング

彼らは、知識を深める目的で、ほとんどすべてのシェーダを自作することを決めた。 Houdini の odForce コミュニティからの GGX プラグインによって反射成分の大部分を処理し、必要に応じて他の BRDF とブレンドした。その後、自作シェーダはシェーディング アセットにまとめられ、 Alembic キャッシュからメタデータを取得することにより自動的にショットに適用された。

さらに、パイプラインの一部として AOV システムを開発し、中央制御による AOV 出力の簡易化と標準化を実現した。コンポジティング作業を一貫したインターフェースで行うため、このシステムはそれぞれのシェーダに組み込まれた。

ライティングは、セットアップをカテゴリごとに分類することで実装され、個別の順序を作品特有のセットアップにもたらし、ライトリンキングの複雑さを最小限に抑えることが可能となった。制作を通じて、ライトのセットアップ全体をショット単位で削除やコピーを頻繁に行った。連結関係を保ちながら、簡単にコピーするだけでレンダリングすることができた。

レンダリングには、 Compute Lighting ノードを用いたレイトレース エンジンを使用した。それぞれのレンダーパスに個別の Mantra ノードを使用することで、複雑な作業もより容易に効率的に進められたうえ、ひとつのショットのレンダーノードを別のショットにコピーして、あっという間にセットアップを終わらせることもできた。

VFX

従来 Houdini によって生成されてきたような VFX エレメント多くが映像のいたるところに見てとれる。彼らは、 Pyro FX を利用して蝋燭や松明に火を灯し、 FLIP 流体を用いてビールや血を表現し、残り火や煙にはパーティクルを、そして木の樽の破壊にはダイナミクスを使用した。

プロジェクト

このプロジェクトの全般的な意図は、チームのメンバーが新しい技術を学び、技術力を高めることであったため、グループの各メンバーが、それまで経験のないタスクをそれぞれ選択し、担当した。彼らの作品 『Skål!』 は、今後開催のフィルム フェスティバルへの参加を予定しており、彼ら自身も、習得した技術と才能を実際の制作現場ですぐにでも活用できる準備ができている。

Filmakademie について

制作メンバーリスト


Marco HakenjosTimm WagenerManuel SeifertJohannes FranzChristian Zehetmeier (Chan)Hanna BinswangerTobias BurkardtZygimantas Kucas

アニメーション / エフェクト制作過程 は、 Institute of Animation at Filmakademie Baden-Württemberg の 2 年間の大学院過程で、アニメーションおよびエフェクト プロジェクトに特化したプロダクションを学ぶものです。

テクニカル ディレクティング (TD)  は 2 年間の大学院過程で、卒業生は、アニメーションおよび VFX プロジェクトのテクニカル ディレクタとしての資格を取得することができます。テクニカル ディレクタは映像プロジェクトにおける技術面全般の責任者で、プロダクションの技術的側面に携わります。 Institute of Animation の TD に所属する学生たちはプロダクション チームに加わり、問題が起こった場合の解決方法やパイプラインの管理などについて学びます。その他、プラグインやアプリケーションの開発、ワークフローとプロダクション要件の定義、進行中の研究プロジェクトへの参加などがカリキュラムに含まれています。


コメント

  • Strob 8 年, 6 ヶ月 前  | 

    That's amazing. The fur, lighting, rendering is just perfect!

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