ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオによる長編アニメーション映画『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』は、名高い探検家の一家が、急きょ招集されたメンバーとともに、謎と危険に満ちた世界へ探索の旅に出る物語です。旅の途中、サーチャー・クレイド(ジェイク・ギレンホール)とその息子のイーサン(ジャブーキー・ヤング=ホワイト)は、長く行方知れずになっていたサーチャーの父、イェーガー(デニス・クエイド)との再会を果たします。目を見張るような数々の光景と、無数の攻撃的な生物との度重なる戦いの末に彼らがたどり着いたのは、これまで自分たちが旅をしてきたのは、アヴァロニアを背中に乗せた巨大ガメの体の中だったという驚くべき真実でした。
ディズニーのアニメーションチームが当初から認識していたのは、部門間の緊密な協力体制が重要になるということです。エフェクトチームは背景、アニメーション、レイアウト、群衆の各部門と連携しながら、物語に有機的な印象を添えるエフェクトのデザインと統合を進めていきました。 チームは Houdini のプロシージャルツールを使うことで、後工程の部門の需要に応えうる柔軟なアセットとワークフローの構築を実現させました。
「アーティストたちは Houdini を活用しながら、神秘的なパンドの脈動や苛烈な酸の湖から、群れをなす翼竜やマクロファージに至る、一連のめくるめくエフェクトを制作していきました」と、Kaschalk は言います。「SOP と VOP を駆使し、広範にわたる Vellum ソルバの運用によって、物語に花を添え、背景に強さと動きを吹き込む、複雑で有機的なエフェクトを構築していったのです。何百ものショットを効率よく自動処理するにあたって Houdini のプロシージャリズムを活用しました」。
チームは Volumetric Neural Style Transfer (ボリュメトリック ニューラル画風変換) 等の技術を駆使して新たな限界に挑戦し、Houdini を使ってボリュメトリックエフェクトに斬新な演出を施していきました。「「新技術で支えるストーリーテリング」という指針のもと、観客に臨場感を味わわせ、主人公たちの心の動きが伝わるよう、どのエフェクトも綿密に構築しました。その偉業を成し得たことが、われらが精鋭部隊の献身と創意を証明しています」と、Kaschalk は力説します。
パンドの脈動
チームは、 Houdini のパワフルな POP ネットワークを使って鼓動を駆動するためのプロシージャルなシステムを構築。「数千もの枝や蔓を含む、種々雑多で複雑な一連の環境アセットを流れるように進むものにしました」と Berberov は解説します。脈動をより良いものにしたのは追加エレメントです。「私たちは、最初のパーティクルシミュレーションのソースを Vellum の布シミュレーションの駆動とシェーダ操作に用いました。そうしてできたのが全体を包むオーラとグロウで、これがパンドの脈動に独特なルックと雰囲気を与えました」。
パンドの電撃
謎の植物パンドは、外敵からの脅威を感じると、根から強烈なエネルギーを放ち、侵入者を攻撃して身を守ります。この「パンドの電撃」エフェクトは多くのシーケンスをまたいで何度も登場し、物語の冒頭では翼竜やマクロファージといった存在に対する防御として、後半では、主人公たちからの攻撃を受ける場面で活躍しました。

エフェクトチームはパンドの電撃を生成するにあたり、侵入者のアニメーションによって駆動するインスタンスベースの手法を採りました。翼竜とマクロファージの場合は、群衆内に侵入者役となるエージェントを設定。「このエージェントのアニメーションサイクルを取得して、各電撃エフェクトのトリガータイミングと接触地点を割り出しました」と、エフェクトアーティストの Joyce Tong は言います。「ワールドの原点で複数の電撃バリエーションのシミュレーションを作成し、その後、社内インスタンスツールの Aurora を使って然るべき位置とスケールに調整し、群衆キャラクタにタイミングを合わせていきました」。
パンド放射器
主人公たちは、このパンドの力を「パンド放射器」という、一風変わった火炎放射器の燃料として使います。エフェクトチームは Volumetric Neural Style Transfer (VNST) を活用して Houdini ネイティブの Pyro ツールの機能を拡張。VNST は、ディズニー・リサーチ・スタジオによって開発された機械学習型プロセスで、2D の画像処理専用だった旧来の Neural Style Transfer (ニューラル画風変換) の進化版です。
「パンド放射器に命を吹き込むうえで第一の課題となったのは、それぞれ個性の異なる複数の自然現象を単一の VFX に落とし込むことでした」。エフェクトリードの Mike Navarro は、そう語ります。「この武器が放つエネルギーの Pyro シミュレーションを生成し、それをさらに加工して、枝分かれする電流やエネルギーのパーティクルの形を作っていく必要がありました」。
Navarro とそのチームは、この Pyro ボリュームをスタイライズする際、VNST を通すことで 3D ボリュームの形を整え、2D スタイルの画像から抽出したテクスチャや特徴を加えていきました。チームは Houdini のネイティブツールを元に、VNST を使ったカスタムパイプラインを構築。「これにより、Pyro シミュレーションのボリューム処理が可能になりました」と、Navarro は言います。「移動中の飛行艇の上で展開する動的なショットでは特に欠かせない複雑なカメラの動きも、これのおかげで管理できるようになりました」。
この、VNST によるスタイライズ処理は Houdini の外で行われました。一方で、エフェクトチームはカスタムの Houdini Digital Asset (HDA) 拡張機能を作成し、アニメータが Houdini インターフェースの外に一切出ることなく、VNST のセットアップとジョブの分散の制御、スタイルパラメータの調整を行えるようにしました。「全体のセットアップをできるだけアーティストに使いやすいものにすることが重要でした」と、Navarro は語ります。
Houdini のプロシージャルという特性は、複数の VNST パスのシームレスな統合を可能にしました。「私たちは、単一ボリュームの中で複数のスタイライズ表現をブレンドするための方法を開発しました」と、Navarro は言います。「その方法は、移流させたパーティクルの Age (年齢) アトリビュートからカスタムボリュームマスクを生成するというものです。これにより、単一の Volume Wrangle ノードで、複数スタイルの混交を制御できました」。
この VNST 処理は計算が重く、大量の GPU リソースを要することがわかりました。エフェクトチームは Houdini 内でタスクを用意してから GPU のインフラストラクチャ全体に分散させ、スタイライズが完了したボリュームを Houdini に戻し入れて再びシームレスに統合しました。
酸の湖
めくるめく旅の途中、主人公たちを乗せた飛行艇ベンチャーは、後にアヴァロニアを背に乗せた巨大ガメの胃袋だと判明する洞窟トンネルを進んでいきます。長さ5マイルのこのトンネルを満たす4000億ガロンもの胃酸は死の湖となって大波を巻き、危険きわまりない間欠泉を吹き上げます。
エフェクトチームはこの途方もない大きさに対処するにあたり、絵コンテに描かれている劇的なイベントを元にトンネルを六分割しました。各セグメントは分散させた FLIP 流体シミュレーションにより、個別にデザイン、シミュレーションされました。「Houdini でトンネルの壁にプロシージャルに動きをつけ、ベンチャーが回避しながら進んでいく大波を作りました」と、エフェクトリードの Debbie Carlson は語ります。「これらのシミュレーションの低解像度のプロキシをレイアウトチームとアニメーションチームに送り、シーケンスを分析したりアニメーションをつけたりするのに使ってもらいました」。

エフェクトチームは他にも、トンネルの出入り口にかかる酸の滝の個別のシミュレーションと、演出可能な間欠泉のシミュレーションを何種類も作成しました。Carlson はこう言います。「レイアウトとアニメーションでショットができたところで Houdini のガイド付き FLIP シミュレーションの技術を使って、ベースとなるイベントのシミュレーションを元に最終的な高解像度の酸のシミュレーションを実行しました。その後、白波と霧の要素のシミュレーションを作成し、ショットに配置していきました」。
Cloud O'War
謎に満ちた世界の探索を続けるベンチャーは「Cloud O' War」という空飛ぶ巨大生物に遭遇します。この風変わりな綿毛状の生物は、自然界の雲の形とカツオノエボシというクラゲを合体させて着想されたものです。
プロダクションの演出チームによって、この空飛ぶ巨大生物の全体的な色味と形が決定されると、詳細なキャラクタデザインの大部分は、エフェクトチームに一任されました。「アニメーションから渡されたのは、この架空のモンスターにゆるやかな上下動や動きをつけた、簡素な初期モデルでした」と、エフェクトアーティストの Scott Townsend は言います。「異なる体の部位に異なる種類の雲を使って表現することにしました」。
エフェクトアーティストたちは、さまざまな体の部位に対応する SDF を使い、雲の種類ごとに独自のノイズを造形していきました。「サーフェスフィールドの値を使って、内部のノイズ密度を上げるためのカスタムランプを作成しました」と、Townsend は解説します。「そこからそのノイズを徐々にエロードさせ、モデルのサーフェスから一定距離を超えたところで完全に消えるようにしました」。

演出側からの要求は、体内から発した脈動が触手の先まで伝うのを見せることでした。実在するクラゲに見られる同様の脈動に着想を得た、この着色された「心臓の鼓動」は、Cloud O' War のボリュームに、よりいっそうの深みと個性を与えました。「胴体と触手に沿って走る細かな神経ネットワークのモデルを作り、それを脈動させて鼓動を作りました。雲のスカルプトと光の鼓動を作るのは全て休息ポーズで行い、後からボリュームとジオメトリを変形させて、動いた後のポーズを作りました」。
ベンチャーが Cloud O' War の体表をかすめて飛んでいく場面では、イーサンと、アメーバ状のお茶面な仲間のスプラットが手を伸ばして体に触れます。この接触で雲の巨塊に乱れが生じ、空に幾筋かのたなびきをつくります。
この繊細な相互作用を実現する際にエフェクトチームが採ったのは、ボリュームのボクセルを Vellum グレインに変換してから、まとめて Glue コンストレインするという斬新な手法です。「Cloud O' War の縮小版から Vellum Balloon のコアも作りました」。Townsend は続けます。「ボクセルから変換された Vellum グレインのうち、バルーン表面にごく近いものを、このコアにコンストレインしました。そして、グレインは含めずにこのバルーンのコアをシミュレーションし、実際のキャラより大きくしたコライダとの相互作用を作り、ゆるやかな波形ができた後、元の形に戻るようにしました」。第二のシミュレーションは、Vellum のグレインのみとし、その後、シミュレーションしたグレインをすべてラスタライズし、ボリュームに戻し入れました。
「私たちは、この静かな触れ合いの場面に、さらなる魔法を添えたいと考えました」と、Townsend は続けます。「そこで、触れた時に光が生じるようにしました。私たちはカスタムソルバを使い、クラウドのグレインの加速値を上げ、その後、徐々に減衰させました」。ソルバで作ったこのフェードのグラデーションは、発光時の色と明度のランプを駆動するのに用いられました。「こうしてできたのが、イーサンとスプラットが Cloud O' War の体表をなでる時に生じる優美な光のたなびきです」。
生ける大気
『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』の大気は、何百万という小さな生物が充満しています。「これは時に「生ける大気」と呼ばれました」と、エフェクトリードの Stuart Griese は言います。このミクロの浮遊生物の群れが出てくるショットは数百に上り、エフェクトチームはコマンドラインから実行できる、完全自動制御の Houdini リグを開発しました。「このリグで、ワークスペースおよびシーンのセットアップから、ネットワークのカスタム化、レンダリング、後工程へのデータパブリッシュに至るすべてに対応できました」。チームは、宙を舞う灰のパーティクルの生成が必要となった後半のシーケンスにも、同じリグを活用しました。
1つひとつのシーケンスに(時に個別のショットも)、そのシーケンスのトーンに合わせたりダイナミックなカメラ動きをつける上で、異なる処理が必要になりました。「40個近いノードのパラメータに、グローバル変数としてアクセスするためのリグを構築しました」と、エフェクトアーティストの Christopher Hendryx は語ります。「これらのパラメータ変数を、実行時に自動ツールで調整しながら各ショットのルックを調えていきました」。アーティストたちは、コマンドラインツールによるパラメータ変数でシーケンスレベルの調整をして全体の展開に合ったルックに統一したり、あるいは、個々のショットをより細かなレベルで調整しながらシーケンスレベルでの変更内容も反映していきました。
「このツールのおかげで、1つひとつのシーンファイルを手動で開いたり更新したりせずとも、アーティストが何百ものショットの作業を進められました」と、Stuart Griese は言います。「その間、パーティクルの密度やサイズから、風速、気流の乱れ、コライダ、LOD の Cutoff の距離等に至る複数のコントローラにより、引き続きルックの調整が可能でした」。
繊毛と植物の動き
『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』では、その独自のストーリー展開ゆえ、背景全体が、命を持って息づく確かな風景として感じられる必要がありました。「予測不能の世界にひたれる没入感がなんとしても必要でした」。背景アニメーション スーパーバイザーの Benjamin Fiske はそう言います。「見る人にも主人公たちと一緒に、先の見えない危険で美しい場所というこの物語世界の真の姿を発見してほしかったのです」。背景の動きの専任として創設された背景アニメーション部門が、50種超の「植物」を含む多種多様な異世界の動植物の作成とアニメーション、ライティングを進める際に、大いに重宝したのが Houdini のプロシージャリズムです。背景からレイアウト、キャラクタアニメーションからエフェクトに至るまで、然るべき解決策さえ見つかれば何だってできるという認識でいました。この信念を持つことで、チーム全体に新たな可能性と発見への道が開けました」。
それぞれ固有の動きをする植物は、背景モデリングチームとルックチームが作り始めたものを、背景アニメーション部門が引き継いで完成させました。「Houdini を使って何十ものアニメーションサイクルを構築しました」と、Fiske は解説します。「その際、エフェクト部門と緊密に連携しながら、完全プロシージャルの技法や、キーフレームを設定したアニメーションに加え、Vellum シミュレーションももちろん用いました。大まかなレイアウトができたところでこれらのサイクルを配置することで、これまでよりはるかに早い段階で、背景の中での動きを可視化できました」。このアニメーションサイクルに対応する新たなパイプラインも構築されました。「以前は最終レイアウトチームで行っていた、サイクルの強度やスピード、オフセットの調整を、パイプライン内のどの部門でも対応できるようになりました」。
本作の架空世界に広がる「風吹く森」の探索に出たイーサンは「呼吸する木」を発見します。エフェクトチームはキャラクタアニメータと連携してこの息づく巨木の動きを開発。アーティストたちが採用したのは SideFX Labs のスケルトンを用いた HDA です。「複雑な枝分かれの構造からカーブを抽出しました」と、Fiske は言います。「そのカーブを使って、木を伝って移動するプロシージャルなふくらみをドライブして、緩やかに上昇するこぶを作りました」。
個別の Vellum シミュレーションは、木をしぼませて呼吸に合わせて動きを反転し、息を吸って張りを出す表現を可能にしました。この木の特徴であるバルーンのふくらみは、Vellum の Pressure (圧力) ソルブで、木の動きとタイミングを合わせてシミュレーションがつけられました。「Houdini のおかげで、18種類すべての木のタイミングを一律に保ったまま、ものの数時間で処理することができました」と、Fiske は言います。「パイプラインを通してどの部門も、すべての木をシンクロさせることだけでなく、ショットをまたいだ時もサイクルの順番が正しく保たれるよう心を砕きました」。
『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』には、この息をする木々の他に、独自の草地も広がっています。背の高いタンポポ状の植物が点在するこの波打つ草地は、芝生や通常の花の代わりに、絶えず動き続けるピンクのゴム状の繊毛に覆われています。
草地の生成に用いられたのはディズニーのプロシージャル植栽ツールの Bonsai です。このツールは、長編アニメーション映画『アナと雪の女王』の制作で、主に木に対して使うために初めて開発されたものです。アーティストは Houdini TD の Kenji Endo が組んだ新しい LOP ノード群を使って繊毛の群生地を配置。その利点はふたつありました。「この LOP ノードにより、レンダー時の動きを駆動するインスタンスポイントやカーブのインポートができました」と、Fiske は言います。「さらに、組み込まれていた TOP ネットワークを使うことで、部門ごとのテクスチャオーバーライドも反映できました」。
アーティストたちは、インポートしたこれらのカーブを使って繊毛をアニメートし、キャラクタとの相互作用を Vellum で駆動しました。Stuart Griese がそれを容易にするリグを構築しました。「Stuart のリグのおかげで、指定のショットからアクション領域を分離できました」と、Fiske は言います。「その後、キャラクタの動きにシミュレーションを実行し、できたものをショット内の繊毛全体が揺れる動きにブレンドさせました」。与えられたどのショットにおいても、積極的にシミュレーションを実行したのは繊毛のごく一部です。「残りは、シミュレーション済みの繊毛をリピート可能なタイルにしたもので対応しました。このことで、草地全体に走る大規模な曲線状ノイズの表現が可能になりました。すべてが単一のリグにパッケージ化され、キャラクタアニメーションがパブリッシュされると随時、パイプラインによって自動的に実行、レンダリングされました。このことで繊毛の相互作用に対する日ごとのフィードバックが可能になったのです」。最終的に、200超もの繊毛ショットをすべて、ひとりのアーティストが対応しました。
破壊表現
ディズニーの前作『ミラベルと魔法だらけの家』では、破壊表現のための新たなレンダリング技法が必要となり、エフェクトリードの Francisco Rodriguez とソフトウェアエンジニアの Brent Burley が、Fracture-Aware Tesselation of Subdivision Surfaces(サブディビジョンサーフェスの破砕認識型テッセレーション) を開発しました。当時はもっぱらリジッドボディダイナミクスに用いられたこのツールは、軽量なジオメトリにモデリングと破砕、シミュレーションを行った後、それを滑らかなサブディビジョンサーフェスとしてレンダリングすることを可能にしました。

実質的にあらゆるものが息づきうごめく有機物の世界を舞台とする『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』がディズニーのチームにもたらしたのは、まったく新しい課題です。トポロジが常に変形を続けるということは、アーティストにとって、ソフトボディの破砕とシミュレーション、レンダリングが求められることを意味しました。「表面がつぶれたり引き伸ばされても、テクスチャやマテリアルが破綻しないようにする必要がありました」と、Rodriguez は言います。「私たちは引き続き Houdini の LOP ワークフローを使って、プリミティブやヒエラルキー、アトリビュートを、ディズニーの Hyperion レンダラで効率よく処理できる形に配置しました」。チームはこうした新たな要件を満たすべく、以前に開発した Fracture-Aware Tesselator (破砕認識型テッセレータ) をアップグレードしました。「厚薄の皮膜と、その他の奇妙な生物学的表現のシミュレーションには Vellum を使用。破砕時のエッジの鋭さとなめらかさを保ちつつ、事前に破壊したソフトボディを自在にレンダリングできただけでなく、サブサーフェス スキャタリングも使用できました」。
火炎放射器
『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』の未開の大自然に迷い込んで久しいイェーガー・クレイドは、狩猟と護身のための火炎放射器を自作します。この奇怪な装置から吐き出される炎の塊を作るのに、エフェクトチームは Houdini を使いました。
「リアルさを残しながらスタイルのある炎を作ることを目指しました」と、エフェクトアーティストの Tom Sirinaruemarn は言います。「大量の案を出し合った末、油彩画に着想を得た筆のストロークに決まりました」。チームは Houdini の Pyro ソルバで炎のシミュレーションを作成して温度フィールドをジオメトリに変換、そのジオメトリからポリゴンカーブを生成し、カスタムの方向性フィールドを使ってそれらのカーブを移流させました。「私たちは次に、サイズや色、不透明度が様々に異なる数千のポリゴンカーブを元に、いくつもの VDB ボリュームを作りました」。

このボリュームのレンダーパスの仕上げはコンプ工程で行われました。「Houdini の Pyro Trail SOP から着想を得た、火炎放射器用のリグを用意しました」と、Sirinaruemarn は言います。「アーティストたちはこのツールを使って、Pyro ソルバに流し込んだソースの放射時の動きや長さ、幅、速度を操作しました」。
Goblinswills
本作に登場するアクション満載の多くシーケンスのひとつが、主人公たちを乗せた生物の群れがランニングマシンのような挙動をする場面です。何千と集まり群れをなす血液細胞状のこの生物は、Goblinswills と呼ばれました。「風の森の追跡」シーケンスと題されたこの場面に臨むにあたり、旧来の群衆シミュレーションワークフローに大幅な手直しが必要になりました。
レイアウトチームは、仮の群衆アセットをコンストレインするためのカスタムリグを使って各ショットを構築。群衆チームがこれを微調整済みの演技と差し替え、Goblinswill の群遊のごく一部を切り分けてアニメーション部門に渡し、主人公たちを配置してもらいました。「アニメータがこの血液細胞状の生物を大量に扱うにあたり「グラウンドプレーン」的に扱える軽量なメッシュ表示機能を提供しました」と、群衆アーティストの Alberto Luceño Ros は言います。「これにより、アニメーションチームによる主人公たちの最終演技の制作と、群衆チームによる血液細胞の動き全体の演技の仕上げ作業の同時進行が可能になったのです」。

この Goblinswill の群遊が重要になるショットは、全編を通して100超にのぼります。そうしたシーケンスの多くで、主人公たちとの複雑な相互作用が伴いました。「この群遊は演出上重要な存在であったため、演出どおりの精確な制御と効率的なルックの統一が同時にできる手法の開発が必要でした」と、Luceño Ros は言います。その実現のため、群衆チームはフレーム非依存型運動原理 (frame-agnostic kinematic principles) に基づくプロシージャルなシステムを構築。これにより、群れを構成する各アセットの計算がすばやくでき、なおかつ計算の予測とカスタマイズも可能になりました。「結果的に、Houdini のプロシージャルなノードベースの環境はこの作業にうってつけでした」。
追加のプロシージャル型モジュールも用意し、密集する Goblinswill 同士の衝突を防ぎ、周囲の反応に合わせたスクワッシュとストレッチをつけることで、各アセットと直近の個体とを分離しました。「補助的なツールセットのおかげで個々の血液細胞の演技と構図をリファインしやすくなりました」と、Luceño Ros は言います。「このプロシージャルな手法は、思い描いたイメージを効率よく実現する上で必要な、一貫性やスピード、柔軟性をもたらしてくれ、この群れが登場する全てのショットでこのリグを使いました」。
大部分のケースはこのプロシージャルなソリューションで事足りました。「より複雑な挙動が求められたのは、イェーガーの火炎放射によって流れが分割される場面など、ごく一部のレアケースです。そのファーストパスでもこのプロシージャルなリグが重宝し、それをシミュレーションベースの技法を用いる際のインプットにしてできたのが、最終結果です」と、Luceño Ros は語ります。
マクロファージ
マクロファージは、息の合った一斉攻撃で敵の力を奪うのに余念がない、『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』のハンターです。群れをなし、オーバーラップの動きで敵を襲うことから、この生物が登場するショットはディズニーの群衆チームが担当しました。
「本作は群衆部門の担当作品の中でも、最も難易度の高いもののひとつでした」と、群衆アーティストの D'Lun Wong は言います。「柔軟でスクリプトを使いやすい環境を実装したことで、要求に応えられただけでなく、それをはるかに超えるものも実現できました。それがわかるのが、スクリーンがほぼ一面マクロファージの群れで覆われるクライマックスのシーケンスです」。
群衆チームはマクロファージのシーケンスで求められる複雑な挙動に対処するべく、Houdini でシミュレーションのセットアップを開発。群衆 TD の Nicolas Nghiem が最初に作ったのが、カスタムスタッキング用のアルゴリズムです。それを実現する際に用いたのが楕円形のプロキシのシェイプで、これによって個々のアセットが折り重なる時の近隣の個体との距離を検知しました。このことで、スタッキングレイヤーに望ましい効果を出すことができたのです。

「このスタッキングアルゴリズムは Houdini の Grain ソルバの衝突検知アルゴリズムに基づいています」と、Wong は明かします。「これを使って、何万ものマクロファージが一定方向に動き、すべての個体が折り重なるようにして、ターゲット方向へ急発進する時の津波状の効果を作りました」。このアルゴリズムにはターゲット用ロケータとフローフィールドのセットアップが実装されており、それによって、マクロファージをターゲットに到達させることができました。「この複雑なセットアップをテンプレート化し、地形のメッシュを繋げば、ユーザが必要に応じて、マクロファージのサイクルや複数ソルバのシミュレーションパス、ポストシミュレーションの編集作業をできるようにしました」。
マクロファージの集団と、有機的で複合的な周囲の背景との、リアルな相互作用を作ることが重要でした。「VDB の変換テクニックを用いて、地形との適応のための一体型ジオメトリを生成しました」と、Wong は解説します。背景の複雑度によっては、ラップデフォーマを使って破れのないサーフェスを作り、有機物から有機物の間をマクロファージが滑らかに移動できるようにしました」。
翼竜
この奇妙な世界の空を飛び回るのは、人の免疫システムを構成する白血球の一種、キラーT細胞を思わせる翼の生えた翼竜です。この生き物は何千匹もの群れをなし、素早い動きで複雑な曲芸飛行を披露します。
群衆部門は、アニメーション部門が作った複雑な飛行パターンに動きを合わせながら、必要とされた膨大な数の翼竜を作成しました。それに際し、チームは Houdini の多種多様なツールセットを活用し、独自の3つのソリューションを考えました。
ひとつめは、個体や小集団のための、スプラインベースのフロー、傾き、および回転の制御システムとなる HDA です。この際、飛行軌道は入力カーブ、ユーザ指定の個体数はパラメータ入力としました。「アーティストたちは、翼竜のスピードやバンク、集団全体の動き、集団内部で起こる動きを制御するパラメータを使用できました」と、群衆アーティストの Jeff Sullivan は言います。「このシステムは、バンク時のカーブのポイントの法線を読み取ります。このツールでは、進行方向のベクトルに合わせて各個体の法線の向きを制御するのに、ポイントの速度ベクトルの計算を用いています」。さらに、もうひとつのプロシージャルなシステムで、集団内の横移動のバンクの精度を向上させました。

ふたつめは大集団用のソリューションです。チームは Houdini のベクトルフィールドツールセットを改造し、効率的かつスケーリングが可能な群衆システムを作りました。「このシステムでは、符号付き距離フィールド (Signed Distance Field) のセットアップを使って、キャラクタが飛ぶ時のガイドとなる何百のモーションパスを含む速度ベクトルフィールドを作成しました」と、Sullivan は解説します。このシステムでは、群衆の大きさおよび挙動に応じてサイズと形が調整された、入力ジオメトリのプリミティブが使われました。「アーティストたちは、この入力ジオメトリをデフォームすることで Turbulance (乱流) を追加できました。その後、この入力ジオメトリを囲むための、内部の密度に変化をつけた VDB ボリュームを作成。Point Cloud Open の関数を使って、ボクセルの中心点に最も近いジオメトリのポイントを計算しました」。このジオメトリのポイントの法線とボクセル勾配の外積によって作成されたのが、速度ベクトルフィールドです。
モーションパスと速度は、入力ジオメトリのポイントクラウドの法線と、周囲のボクセルとの相互作用に応じて抽出。「ポイントクラウドと VDB ボリュームとの相互作用から作った移流によって翼竜のスピードと流れ、方向を決めていきました」。Sullivan は付け加えます。「このベクトルフィールドによる群衆システムにより、劇中最大の群衆のための、スピーディかつ、スケーリングと演出が可能なソリューションがもたらされると同時に、遅くて重い BOIDS シミュレーションが不要になりました」。
最後に、プロシージャル型のバイアススカラーアルゴリズムにより、各個体の自然な傾きと回転を計算。その際に用いられたのが、フレーム間の計算によって割り出したベクトルの偏向です。「このアルゴリズムは、対象キャラクタの位置と方向をゼロに戻す反転用マトリクスによって、その個体の現在のフレームと原点との差を計算します」と、Sullivan は説明します。「さらに、現在のフレームにおける位置を読み取り、そのベクトルを元に次フレームでの位置を予測します。この予測位置から実際の位置までの偏向(「差分」)の値によって、キャラクタの方向に与える影響量が決定されました」。この差分の大きさが、ウェイトを付けたバイアススカラーアルゴリズムに追加され、傾きの量が決定されました。「こうした調整の計算は最終仕上げのパスで行われ、フレームごとに各キャラクタにプロシージャルに適用されました」。
眼球
真実が明かされる驚きの場面でベンチャーは、巨大ガメの目の横を通り過ぎていきます。主人公たちが旅をしてきたのは、この大陸級の生物の体内だったのです。「この巨大ガメの目に対する案は、ウミガメの目に見られる宇宙的なルックというものでした」と、エフェクトアーティストの Jesse Erickson は言います。「満天の星が輝く渦巻き状の銀河のような表現と、海中生物の雰囲気を兼ね備えたものにしたいと考えていました」。
エフェクトチームはまず、簡単なチューブ状のジオメトリを用意し、FEM クロスの破壊でメッシュを内側から引き裂いて穴をあけました。次のステップでは、その管の下部を外側に広げてからメッシュを平板化し、円環状にしました。そして、先ほどあけた穴を埋めてその部分を押し下げることで、虹彩を特徴づける細かい凹み「フックス窩」を作りました。
「この虹彩を Vellum のクロスソルブにかけて皺を作りました」と、Erickson は言います。「コンストレインの長さを操作して曲面の隆起部にサーフェス領域を作り、フックス窩周辺に、よりうねりの強い襞を作りました」。

この虹彩のベースメッシュを変形させて細かな目の動きを拾えるよう目玉にかぶせ、そのあと筋収縮用の四面体のケージに埋め込みました。実際の虹彩の筋肉組織のリサーチを元に、チームはこのケージに二組の Tetrahedral Fiber コンストレインを実装。ひとつが虹彩を囲む収縮表現用のもの、もうひとつが膨張時のための放射状のコンストレインです。
「私たちはアニメーションから膨張を測定し、それを Vellum の Tetrahedral Fiber シミュレーションのターゲットに設定しました」と、Erickson は言います。「これにより、目の巨大感を表現でき、虹彩に自然な動きをつけることができました。Vellum の Tetrahedral Soft Body を使うことで、人の虹彩が動くところをスローモーションで捉えた参考動画に見られた、目の痙攣や動きで生じる肉感的で微細な波紋の表現が可能になりました」。
虹彩アニメーションの動きの確認が取れたところで、チームはさらなるディテールを追加していきました。これは、虹彩が大写しになるショットに不可欠の要素です。「フックス窩周辺の、凹凸の激しい裂状の襞をシミュレーションするのに、ここでも Vellum を使いました」と、Erickson はコメントします。「先端に光る「星」をつけた細い筋も加えました。フックス窩の中にはクリスタルのジオメトリを撒き、虹彩表面全体には、きらめく星をさらに散らしました。最後に、ルックチームから渡されたテクスチャとノイズオペレーションによって、虹彩の中ほどから強膜へと広がる、カラフルな渦巻く星雲のクラウドボリュームを作りました」。
スライム
未知の世界の表現にはネバネバした物体がつきものです。本作ではスライムをテーマにネバネバのバリエーションが無数に作られ、背景要素としてだけでなく、主人公たちに絡みつく邪魔者としても描かれました。
旅に出てまもないサーチャーの目の前に広がるのは、粘着質の迫力の瀑布「スライムの滝」が流れ落ちるパノラマの風景です。エフェクトアニメータの Michelle Sharp は、 Houdini 内で起伏をつけたソースを用い、スライムの滝にランダムな裂け目を作りました。衝突で滝の流れが枝分かれする描写にはカスタムのベロシティフィールドを使い、背景ジオメトリとシームレスになじむようガイドしました。さらには、内側と外側の気泡や、光の弧を描く霧によって、活気と質感を与えました。

主人公たちは、旅の途中でさらなる謎のネバネバに幾つも遭遇します。ある場面では、カメの浮島を飛び移ってスライムの池を渡ります。ぶよぶよのモンスターに飲みこまれたサーチャーを救う場面では、細かな粘性の破裂が生じます。さらには、サーチャーに「奇妙な鼻水」を垂らしかける木も登場します。こうしたちょっとした場面の1つひとつに、それぞれ異なる相互作用や環境に対応するための独自のセットアップが必要になりました」と、Sharp は言います。「これらのセットアップの大部分は可変粘性 FLIP シミュレーションを軸に構築、そこに複数のカスタム速度を設定して、スライムの「演技」の演出をより容易にしました」。
Sharp は「奇妙な鼻水」のために独自の手法を開発し、かつてない質感のスライム状物質を作りました。「Vellum のグレインを、複数の Glue コンストレインおよび Attach to Geometry コンストレインと組み合わせ、より粘りが強く伸びの良いスライムを作成しました」と、Sharp は解説します。「こうすることで、アニメートしたキャラクタの上に乗せたり、アニメートしたキャラクタとの相互作用の際の動きが良くなりました。これらのコンストレイン専用のマスクをアニメートすることで柔軟性が得られ、サーチャーが振り払おうとする時も、彼の体にまとわりつかせたまま、伸びや裂けを表現することができました」。
コメント
aparajitindia 9 ヶ月 前 |
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alonzotheja 8 ヶ月, 3 週間 前 |
really cool insights
Anonymous 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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Anonymous 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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Anonymous 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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<h1> ALAN Mohammed </h1></a>
Anonymous 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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Anonymous 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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Anonymous 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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atifhassni505 8 ヶ月, 3 週間 前 |
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seohunter106 2 ヶ月, 1 週間 前 |
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