クールで目新しく、それでいてストーリーを語れるものを。
オーストラリアの VFX スタジオ、アニマル・ロジックは、映画 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 において、視覚的に抽象性の強いショットの制作を担当した。ウルトロンのホログラム、ジャーヴィス、そしてサイバースペース トリップにおける VFX 制作では、正解等がひとつでない実験的かつクリエイティブなビジョンが求められた。
視覚的可能性の幅広さにより、制作の初期段階では数百回にもおよぶ試行錯誤に多くの時間を費やし、ディレクタのアイディアをどのようにビジュアルとして伝え、物語の文脈との調和させるかをクライアントとともに絞り込んだ。
「プロシージャルワークフローは、複雑なデザイン作業において必要不可欠なものでした。最終成果物のみならず、そこに至るまでのあらゆる試行錯誤の作業において。」アニマル・ロジックのデジタル・アーティスト、 Matt Ebb 氏は言う。「膨大な作業指示を処理するうえで、 Houdini をデジタルスケッチパッドとして活用することで、後々プロダクションラインの下流で容易に再利用できるような様々なアイディアやテクニックを簡単に試行錯誤できました。」
「膨大な作業指示を処理するうえで、 Houdini をデジタルスケッチパッドとして活用することで、後々プロダクションラインの下流で容易に再利用できるような様々なアイディアやテクニックを簡単に試行錯誤できました。」

Houdini をデザインツールとして使用することは、私たちにとって道理にかなっていましたし、結局、最終的に導入へと至ったわけです。
Matt Ebb, Animal Logic
プロジェクト全体を通じてアニマル・ロジックは、特定ショットのある時点でのルックだけでなく、常に進化し変化するホログラフィック システムを作り出したが、その最適な表現方法として行きついたのが、 3D ホログラムの構築だった。
ショット制作においては、難解な複雑性や、作用性と反作用性、エネルギーの移動性を備えたインテリジェントなホログラフィックシステムを視覚化することが求められた。 Houdini のプロシージャル ワークフローにより、音声信号を伴うエフェクトアニメーションを制御し、周辺のジオメトリのアニメーションに合わせてセグメントを反応させ、さらにショットに最適な偶発的効果を得ることもできた。
ウルトロンのホログラム、ジャーヴィスの大部分と、サイバースペースの CG ショットの制作すべてに Houdini
が使用され、モデリング、アニメーション、ライティング、レンダリングの作業はプロシージャルに進められた。シミュレーションに時間を費やすことなく、で
きるだけ効率的に作業を進めることが優先された。
「作業環境のセットアップは可能な限り ‘ライブ’ でかつインタラクティブにデザインされ、シミュレーションやデータのベイク処理を不要にし、可能性を追求することが非常に快適でした。」 Ebb 氏は説明する。「優れた非破壊的なプロシージャル ワークフローにより、ノードネットワークのあらゆる場所に入り込み手を加えることが可能で、必要とされるクリエイティブなフィードバックを迅速に提供してくれるので、その結果をすぐに確認することができます。ファームでの重いシミュレーションを待っていたら、簡単に見失ってしまうでしょう。」
アニマル・ロジックは、ボリューム、ポイントクラウド、カーブを含む幅広い Houdini のジオメトリ機能と、ボリューム (VOPs)、 VEX wrangle サーフェス (SOPs) を大量に活用した。

Houdini 13 や 14 で追加された VEX の新機能のうち、ジオメトリの生成や削除が行えるものなどは非常に役立ちました。
Matt Ebb, Animal Logic
ホログラムには従来の意味合いでの複雑なライティングが不要だったため、多くのシェーディングを Houdini のサーフェス オペレータ (SOPs) によりインタラクティブに施し、アトリビュートの設定によってカラーや不透明度のアニメーションやその他のユーティリティ パスの制御を行った。またカスタムツールを作成してHoudini のライトを使用しSOP 内でホログラムをインタラクティブにライティングし、ライティングやシャドーイングの結果をアトリビュートにベイクした。これにより、最終的なレンダリン グ結果に非常に近いものを 3D ビューポート内で確認することができ、ファームでのレンダリングが高速化し、アイディアの試行錯誤が迅速に行えた。
アニマル・ロジックの有するアセットシステムとパイプラインの Houdini への統合は、デジタルアセットに大きく依存している。外部アセットをプロシージャルな形でインポートしているため、 Houdini のアーティストはプロップやセットなどのアセットの見え方を確認し編集することができる。
「.hip ファイルのみに依存するよりも、作業を ‘FX コンテナ’ 内で進めました。これは基本的にパッケージ化したサブネットで、ショットやシークエンスの特定のタスクに関連したデータを標準構造 (geo、CHOPs、SHOPs、ROPs など)にしています。」 Ebb 氏は説明する。
これら ‘FX コンテナ’ は、全社共有のアセット マネージメント システムからHoudini シーン内にインタラクティブに頻繁にチェックイン・チェックアウトされ、複数のアーティストが相互に作業データの確認、参照、取り出しをしながら、同一ショット上の別々のタスクを同時に処理することができる。

アニマル・ロジックでは、 Houdini アーティストが作成したユーティリティのうち最も便利なものをバージョン管理された Houdini デジタルアセット (HDA) としてパブリッシュし他のアーティストと共有することが一般的になっているが、これはクリックひとつで簡単に行える。
Mantra によるレンダリング
Houdini の持つ緊密な統合性と柔軟性から、アニマル・ロジックは 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 で担当した全ショットのレンダリング ソリューションとして Mantra を選択した。
「ジオメトリ上にカスタム アトリビュートを容易に作成し、簡単かつ迅速にシェーダに流し込んだり、あるいは、合成用に AOV として持たせたりといった機能により、時間を大幅に節約することができました。」 Ebb 氏は言う。「ライト単位やコンポーネント単位での AOV のエクスポートも非常に使いやすいです。こうした改善は、ただ単に作業時間的な意味合いでの段階的な機能向上にとどまりません。硬直したパイプラインでは、こうした小さな変更を加えることが可能だとしても、手間がその価値に勝ってしまうといった扱いにくさがしばしば起こります。使いやすさと統合性を兼ね備えた Houdini では、ちょっとした実験に半日をかけたとしても無駄になるということがないのです。」
Houdini のプロシージャルワークフローは、このプロジェクトにおいて、アニマル・ロジックのアーティストに、こうしたエフェクトのルックに幅広い視覚的可能性の提示とその評価を可能にし、有用なツールを同僚と簡単に共有させ、Mantra を用いてショットを完成させるという明らかなメリットを提供した。
「Houdini は個々のコンポーネント間の相関性の高さによって、デザイン作業のあらゆる側面を同時に容易に進めることができました。」 Ebb 氏は言う。「クライアントによるデザイン変更があった場合、他のチームへのデザインの差し戻しが生じるのではないかと心配する必要はなく、その場で修正を加え対処することができました。特定のルックのバリエーションを増やす作業では、モデル上にアトリビュートを作成するか、シェーディング トリックを使うか、そのジョブに最も適したテクニックを選択することができました。」

Houdini のプロシージャルアプローチを採用したことで、アニマル・ロジックは、ショットの様々な視覚的可能性を深く掘り下げて検討するといった、複雑かつ抽象的だ と考えられがちな作業に十分な時間をかけることができた。プリビジュアライゼーションで綿密に計画されたショットシークエンスを VFX アーティストは単に再現するだけ、クリエイティブな表現の余地はほとんどない、というのは往々にしてあることだ。アニマル・ロジックにとって、この映画 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 でのショット制作は、ストーリーを語り、コンセプトからスクリーン上の表現に至るまでのアイディアを形にするツールとして VFX を使用する機会となった。
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