Posted 3月 05, 2018
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スーパーヒーローと悪役が繰り広げる一大戦闘シーンを演出し、その後ひとつの世界を丸ごと壊すという仕事を成し遂げるには、しかるべきツールが必要です。

幸いなことに Framestore は、タイカ・ワイティティ監督作品『マイティ・ソー バトルロイヤル』の白熱の第三幕を制作するにあたり、長年にわたるエフェクトシミュレーションの経験を大いに生かすことができました。ソーとその悪しき姉ヘラが展開する戦闘シーンや、巨人クリーチャのスルトによる攻撃、アスガルドの崩壊を含むこの最終シーケンスのキーショットは Houdini の力を借りて可能になったものです。



アクションの舞台

『マイティ・ソー バトルロイヤル』の第三幕はアクションが目白押しです。この橋は、宇宙船に突っ込まれたり、ハルクと巨大狼のフェンリスに打ち砕かれたりと度重なる破壊行為をくぐり抜けます。ソーが雷の力を召喚したのもこの橋でした。





Framestore の FX スーパーバイザ、Andy Hayes 氏はこう語ります。「この橋は、内側をエネルギーが流動する透明な結晶構造になっているため、1つのショットを通じて複数個所が崩壊していく様子を見せるには、プラスアルファの努力が必要でした。このプログレッシブな破壊を作り、シミュレーションをやるのに Houdini を使いました。ヘラはこの不思議な結晶構造を自らの手で作り出し、ヒーローたちに危害を加え、アスガルドの民を捕えようとします。この結晶構造を撃ち抜き、引き裂き、吹き飛ばすために様々な破壊用システムが使われています」

ヘラはアスガルドの兵士 (以下、Dガード) の大軍を目覚めさせ、最終決戦で自分の味方につけます。Dガードが倒されたり破壊されるショットにも、Houdini のシミュレーションが用いられました。「Houdini で Dガードを壊す際に大きな課題になったのは、アニメートしたメッシュからキャラクタの破壊を作り出すことです」と、Framestore の FX アーティスト、Jonathan Lyddon-Towl 氏は語ります。「私たちはこれを、キャラクタを取り出し静止ポーズを取らせることで実現しました。その後、このキャラクタをバラバラに壊し、そうしてできたピースをポイントデフォーメーションを使って元の体に戻していきました。これによりポイント数やピース数が変わることなくデフォームする破壊ジオメトリを用意することができました」





「Bullet にはシンプルなジオメトリの方が適しています。そのため全てのピースをシンプルなプロキシにリダクションしました」と、Lyddon-Towl 氏は付け加えます。「寄せ集めたピースの塊を静止した変形ジオメトリとして扱い、剣や雷の攻撃を受けるなどの必要に応じて動かせるようにしました。この方法で破壊の全体的なルックと動きを作り、そこからポストプロセスでセカンダリを生成していきました。少量のダストエフェクトも用意し、稲妻や剣との接触で発生するインタラクティブライティングに対して主に使用しました。このダストは最初に作った壊れキャラクタをソースにして作ったもので、ピースの動きで移流させています」

稲光の表現





ソーはある場面で、頼りのハンマーを失い今にも敗れそうになるものの、新たなパワーを獲得し雷を放つ能力を身につけ、突如として復活を遂げます。この力は徐々に変化していき幾つかの段階に分かれおり(それぞれ「ビルドアップ」ショット、「ジェネリック」ショット、「ヒーロー」ショットと呼ばれました)、1つひとつ異なる手法が求められました。

「「ビルドアップ」ショットの雷には、稲光を1つひとつ配置していきました」と FX ライティングリードの Andreas Vrhovsek 氏は語ります。「この稲光にはクライアントから具体的に指定された流れや動きをつけねばなりませんでした。あるアニメーションフレームを静止ポーズとして選び、そこに稲光を配置しました。ペイントの開始・終了位置の指定などの簡単な機能を自社ツールに追加し、方向を持つ動きや循環型の動きのための追加アトリビュートも用意しました」

「ジェネリック」ショットの雷は、D ガードの戦闘シーンの付近を中心に使われました。Framestore は、ソーの甲冑と体表の稲光を自動生成するツールを開発し、それを使えばアーティストが稲光の数や動きの速さを設定できるようにしました。また、ソーやその他のキャラクタが付近のオブジェクトに向けて放つ雷を追加するのには、別のツールが用いられました。「アーティストは通常、雷の発生源となるアセットを最初に決めてから、稲光のタイミングや量を設定していきました」と、Vrhovsek 氏は解説します。「そこに別の雷モジュールを繋げて、形やタイミング、動きの修正および操作を行いました。キャラクタやオブジェクトが雷に打たれた時には、モジュールをさらに追加すれば、当たった地点から雷が広がり対象を包み込んでいく表現を作れるようにしました」





そして「ヒーロー」ショットの雷が使われたのは、ソーが放つ雷で虹の橋の一部が崩れ落ちる戦いの終盤です。Vrhovsek 氏によればこのシーンは、「雷が橋を貫いて崩す感じを出す」ため、既存ツールにカスタム修正を加えてレンダリングしたそうです。

Vrhovsek 氏はこう続けます。「少なくとも目に見える部分の雷は、ポイント状にレンダリングしています。このポイントには、カラー、透明度、半径(秒数と伸縮範囲)のための追加アトリビュートと、2D で分離できるようにするための一意の識別子を持たせました。稲光から発生するセカンダリライトのレンダリングにはボリュームを用い、レンダラの使用効率の高い方法で雷のエリア一帯を包み込みました」

スルトの襲来

このシーケンスで文字通り「最大」の要素のひとつとなったのが炎の巨人、スルトの存在です。その巨大化した体を表現するため、Framestore では、燃え盛る硬いサーフェスを大量に持つモンスターを作らねばなりませんでした。「シェーディングチームで体内と体表のボリュメトリック構造を駆動させるための座標系を生成するのに Houdini が役立ちました」と、Hayes 氏は語ります。「スルトのサーフェスを Houdini で用意して自社の流体シミュレータに入力できるようにし、全身を覆う炎のシミュレーションを全てこのシミュレータで対応しました」。スルト(劇中のこの時点での呼び名は「メガスルト」)は最後、アスガルドの結晶状になった心臓部を刺し貫いて一国を滅ぼします。この場面のために、Framestore では Houdini を使って地表を走る谷間の亀裂をアニメートしたものを作り、最後に猛烈な衝撃波が生じるようにしました。そこには周囲に舞う雲やプリューム、棘状の砂ぼこりやデブリ、ガスのように広がる炎も混ぜ込まれています。





Framestore の FX リード、Sonya Teich 氏はこう言います。「アスガルドを滅ぼすという大仕事のあらゆる場面で Houdini を用いました。社内ソフトウェアを使ってパブリッシュ済みの建物1つひとつに最初のデフォルトの破壊をつけ、それを Houdini の RBD のセットアップに流し込んで「崩壊後のバージョン」を作り、景観チームがそれを使って、シーケンスの進行に伴い激しさを増すアスガルドの破壊を作っていきました」


コメント

  • lovehacking7531 6 年, 11 ヶ月 前  | 

    nice

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